食べ物を材料に使った創作について

来月の小学生クラスではパスタを使った工作をする予定です。
食べ物を材料に使った工作について調べておりましたら、「食べ物を粗末にするなんて」とお考えの方もおられることを知りました。

当教室の考え方としてはシンプルに

「粗末にしていないのでOK」

ですが、少し掘り下げて説明できるようにしておきたいと思いました。

まず「粗末」の意味から調べました。

"粗末とは

1 作り方などが、大ざっぱなこと。品質などが上等でないこと。また、そのさま。「―な家」「―な食事」→御粗末
おそまつ

2 いいかげんに扱うこと。ないがしろにすること。また、そのさま。「食べ物を―にするな」「―な扱いを受ける」"

デジタル大辞泉


————————

2の項目ですね。
以下の理由から、「食べ物を工作に活かして使うこと」=「いいかげんに扱うこと」だと自分はまったく思いません。

・食べる以外にも使える特性を心の糧や教育材料として活用している
・そのことでその食材への敬意が失われるわけでもない

しかしどうやら、「食べ物を食べずにほかのことに使うこと」を反射的に「粗末にする」と感じてしまう方がおられるようです。

実は、人々は古来より食べ物に敬意を持ち、食べる以外にも特性を活かしながら利用し、心豊かに生活してきた歴史がありますので、古今東西のさまざまな例を集めてみました。

創作の材料:いも判、野菜スタンプ、米のり、パスタアート、木炭デッサンを消す食パン、卵テンペラ技法、あぶり出し
玩具の材料:お手玉、小麦粉粘土
感触遊び:コーンスターチ遊び、寒天遊び
信仰:精霊馬、盛り塩
掃除:酢、牛乳
実験:メントスコーラ、タバスコ10円玉、フルーツ電池
祭り・風習・儀式:トマト祭り、オレンジ祭り、ハロウィンのかぼちゃ、豆まき、ライスシャワー、ビールかけ
芳香や薬効:ゆず湯、ドライフルーツのポプリ
映像・舞台の小道具:小豆の波音、食卓風景、パイ投げ
研修ゲーム:マシュマロチャレンジ(パスタ、テープ、ひも、マシュマロを使って 自立可能なタワーを立てるチームビルディングの為のゲーム)

並べてみると上記の中でもこれは許せる、これはちょっと、というものは人それぞれかもしれません。
工作に使われることに抵抗感がある方がいらしても仕方が無いのかなとも思います。
ただ、そのことをこどもに表明することで創作を否定してしまったら、それはこどもの創作意欲や満足感、自己肯定感すべてを「粗末に」する行為です。

一方こどもも小さな頃から「食べ物で遊ばない」と言われて育った方も多いでしょうから、いいのかな?と混乱する可能性もあります。
その違いを理解するには、その食材を準備した人や作った人が悲しむかな、どうかな、と想像してみるのがわかりやすいと思いました。
・食材を準備してごはんを作ったパパ、ママが悲しむから、目の前のごはんで遊ぶのは無し。
・先生はすてきな作品ができたらうれしいなと思って準備しているから、工作に使うのはあり。使わないで粉々にして捨てるのは無し。

では食材そのものを作った人はどう思うか・・・食べずに工作に使われるのは悲しいでしょうか。
創作に活かすなんて「全然あり」なのでは?と思うのですが、それも絵画・造形教室という立場での都合の良い想像かもしれない、と思って一応「きゅうり 農家の気持ち 精霊馬」「パスタを作る人 パスタ工作」などで検索してみました。するとこんな検索ワードでも欲しい情報に近いヒントが出てきました。

以下は野菜を多めに使い、精巧な細工をした精霊馬についての記事です。

"一般的な精霊馬よりも多くの野菜を使っているためか、灰田さんは「農家の人ごめんなさい」とコメントしていますが(中略)
「私は農家ですが、野菜も喜ぶと思います!」「謝らなくていいですよ、OKです!」と農家のかたからのコメントも寄せられていました。"

車好きだった祖父のための『精霊馬』 クオリティの高さに驚嘆!


また以下はパスタ工作作家さんに関する記事です。

"アーティストのSergey Pakhomovさんは飛行機や車、家や風車のミニチュアを作っており、(中略)
 マカロニ工場の広告キャンペーンのため、パスタで車を作ったのをきっかけに、パスタ工作が趣味になっていったのだとか。"

パスタで車や家を作るロシアのアーティストがスゴイ


なんとマカロニ工場自らがキャンペーンで工作を発注しているようです。

どちらの作り手も一例ですので、まったくネガティブな意見がないとは言い切れませんが、ここまで調べて当方としてはだいぶ腹落ちしてきました。
皆さまはいかがでしょうか。

食べ物は「〇〇みたい!」という見立てや観察対象のモチーフとしても当教室のこどもたちは特に日常的に親しんでいる対象です。
パスタもその美しい造形や手触り、カラカラとした音などに刺激を受けながら、堂々と作品に活かしていただければと思います!